CURREBT STATUS AND FUTURE鍼灸業界の現状と
新しい未来
これから鍼灸師として働く皆さんへ
~事前にどのような仕事なのか知っておきましょう~
TO EVERYONE WHO WILL WORK
AS AN ACUPUNCTURIST FROM NOW ON.
みなさんの多くは高校を卒業後、3年間鍼灸専門学校で学び、「はり師」と「きゅう師」の資格を取得されているのではないでしょうか。
これから、「鍼灸師」として活躍することを目指している皆さんに「鍼灸業界の現状」についてお話したいと思います。
鍼灸師としての
就職事情
EMPLOYMENT CIRCUMSTANCES
「はり師」と「きゅう師」の国家資格を取得して「さあ鍼灸師として働こう!」と思っても、
免許としての鍼灸師は「足裏についた米粒」と揶揄され、「取っても食えない」資格だと表現されるほどかなり厳しいです。最も食えない国家資格とも言われています。
(ただし、ごく一部の鍼灸師はとても成功していますし、悩んでいる患者さんを助けることができるとてもやりがいのある仕事です)
その理由としては、次のことが考えられます。
接骨院・整骨院などと比べ鍼灸院が圧倒的に少ない上に
「鍼灸院はほとんどが個人経営でそもそも求人を出していないので経験を積むことができない」
「求人があったとしても即戦力を求められ鍼灸未経験者の募集をしていない」
「鍼灸院経営に対する知識を勉強できる環境がない」
鍼灸院は、整骨院・接骨院・マッサージ店などと比べ「身体に鍼を刺す」ということに抵抗を感じ「患者さんが入りにくい」傾向があります。
そのため、どうしても経営が難しくなり求人を出すこと自体が少なくなります。
また、求人が出ていたとしても、即戦力が求められるため、
鍼灸未経験者を雇うことが少ないのが現状です。
WHERE RO WORK 鍼灸師の就職先
鍼灸師の就職先を募集が多い順番にご紹介します。

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訪問(往療)専門院
歩合で給与が決まりますので、比較的に高い給与をいただくことができます。
訪問治療の対象の患者さんは歩行困難者ですので、基本的には寝たきりのご年配者がほとんどです。鍼灸院に通院される患者さんとは、施術はもちろんのこと、対応も全く違うことになります。
ですので、訪問治療ができたからといって通院患者さんが治療することはできません。
(現在はコロナ禍で往診先の施設に入ることができず、給与も下がっているところが大半です) -
接骨院(整骨院)
比較的、低料金で施術が受けられるため、1日の患者数はとても多くなりますが、多くの場合、鍼灸院とは患者さんの層が全く違います。
接骨院勤務時代に多くの患者さんを治療してきた鍼灸師が開業して失敗するケースが多いです。
鍼灸師は接骨院の健康保険の対象外なので、柔道整復師のサポート業務となります。
鍼灸を併設しているところもありますが、ほとんどの場合、柔道整復師の施術の上でのプラスアルファーという位置づけです。
鍼灸師が勤務する場合は1日の鍼灸施術数を確認し、先輩鍼灸師に指導してもらえるか確認すると良いでしょう。
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整形外科
整形外科内のリハビリで勤務します。
完全に医師の指示下(指示以外の施術は不可)で施術を行う場合と、逆に全てを完全に任せられる場合とがあります。ほとんどの医師は東洋医学的な知識はないため(もちろん東洋医学的知識がすごい先生もいます)解剖学だけに基づいた鍼灸となります。
来院数は接骨院と同じくらい多いですが、最近の傾向としてリハビリ(鍼灸)を閉めている整形外科が増えています。 -
美容鍼灸専門院
勤務場所は都心部で、ほとんどの患者さんが女性です。
美容鍼灸以外の治療はしない院が多いので総合的な鍼灸治療を行いたい人には不向きです。
また、物販のノルマがあるところも多いです。コロナ禍で患者さんが不要不急の外出を控えているなか、都心部に電車に乗って美容のために通院する患者さんは減っています。 -
鍼灸院
求人を探しているとお分かりだと思いますが、鍼灸院の求人はほとんどありません。鍼灸院の経営は非常に難しいからです。
長く安心して働きたい場合は、法人化している鍼灸院をおすすめします。
パターンとしては2種類で、院長の補助だけをしてスタッフは治療をしない鍼灸院と、スタッフに患者さんを任せる鍼灸院とに分かれます。
もし鍼灸院での募集があった場合は、社会保険加入の有無を確認した方が良いでしょう。

SEVERE SITUATION 開業鍼灸院の厳しい現状
鍼灸専門学校で『10年後に鍼灸業界にいることができるのは10人に1名』という言葉を聞いたことはないでしょうか。
近年では訪問治療がブームになり、往療バブルがあって訪問専門で開業する鍼灸師が増えたため、10年後に鍼灸業界に残っているのは2~3名に増えたのではないかと思います。
しかし、厚生労働省は往療費を削減する方針ですので、今後は訪問治療は減少していくでしょう。
個⼈での鍼灸院開業は、以前と⽐べてかなり厳しくなってきています。
昔の鍼灸院は、駅から離れた個人宅の居間を改築して、細々と開業しても腕さえあれば患者さんがきた時代もありましたが、現在ではそのような鍼灸院には患者さんは来るということは少ないです。
現代では「綺麗な外装」「清潔な内装」「駅から近い」などの利便性がとても重要になります。 (自分が施術を受ける立場になって考えると、より共感していただけれるのではないでしょうか?)そのため、鍼灸院開業には多くの開業資金が必要になります。 参考までに当院では現在、坪当たり70万円の内装費がかかっています。 これは電動ベット等の設備費用は別になります。 このように、開業時は多くの資金がかかるのです。
また、開業時は「広告」を上手く活用することも重要となっています。 「コロナ禍で鍼灸院の対策はどうなっているか?」「鍼灸院内は清潔なのか?」などをホームページにあげて患者さんに見てもらわないと患者さんは近寄らない時代です。 ホームページを見てもらうためには以前よりも格段に大きな費用がかかります。 (当院では年間200万円程度の広告宣伝費がかかっています。)
加えて、社会保険加⼊コストのハードルも⾼いため、開業鍼灸師はスタッフを雇う事ができず、 1⼈でずっと鍼灸院を回していかなくてはなりません。 ⾃⾝が病気になったりした場合、鍼灸院を閉めなくてはならなくなるため、経営的な負担となるのはもちろんのこと、⾟い症状を抱えた患者さんにも、⼤変な負担をかけることになります。
上記の環境下で、ただでさえ開業するのは難しいといわれる鍼灸業界で、個⼈で開業し、成功するのは⾮常に厳しくなります。
このような時代の為、当院では院長が引退後、素質あるスタッフが鍼灸師として少しでも成功できるように、各院をその時の分院長に任せて継いでいただく方針をとっています。
REQUIRED SKILLS 鍼灸師として求められるスキル
「鍼灸師としての採用が決定した」ひとまずはみなさん胸をなでおろすのではないでしょうか。
しかし就職先が決まったことが「ゴール」ではありません。
鍼灸師とは一生修行していく職業です。
ここからがこれから続いていく長い鍼灸師人生の「スタート」です。
では、鍼灸師はどのようなスキルが求められるのでしょうか。
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気配り ATTENTIVE
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どの職業でも必須ですが、鍼灸師は特に「気配り」が求められます。
鍼灸師は、患者さんと一対一で向き合わなければいけません。
患者さんがどのようなことを求めているのか、常に気を配りながら施術を行うことが重要になります。
患者さんの中には、「とにかく症状を早く改善したい方」もいれば「じっくりと施術者とコミュニケーションをとりながら改善に向かいたい方」もいらっしゃいます。
患者さんがどのようなことを私たち鍼灸師に求めているのか、しっかりとその要求に答えられているのかを常に考え、治療に向き合うことが求められます。
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体力 PHYSICAL FITNESS
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鍼灸師は体力勝負な職業です。
患者さんも元気がない鍼灸師に治療してもらおうとは思わないでしょう。
静かに自分のペースで仕事ができるわけではありません。
有能な先生は1日に何人もの患者さんの治療を行うので診療時間も多くなります。
土日も治療しているところも多く、休みも少ないため「体力」がないとなかなか続かない仕事でもあります。
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精神力 MENTAL STRENGTH
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具合の悪い患者さんの大切な身体に「鍼」や「灸」を施術するということは、皆さんが思っている以上に神経を使います。
また、思わぬクレームを受けることもあるでしょう。
ときには自分の施術に自信がなくなり落ち込むこともあるかもしれません。 しかし、そのつらい出来事や落ち込んだ経験をバネにして次のステージに行かなければいけません。
負の感情により施術に影響がでてはいけませんから、常に自分を「コントロール」し感情をフラットに保つ「精神力」が必要です。
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